以前投稿した似た講演のバージョンアップ版要旨 これからのDI業務を考える -病棟薬剤業務との連携-

 医薬品の情報提供活動(DI活動)を料理に例えるのであれば、大切な人に食べさせたいと思う美味しい晩御飯を提供するために、その人が美味しく食べてくれているのをイメージして、作り方を本で調べたり聞いたりして、必要となる食材と調理器具を用意して、その人の好き嫌いも考えて、一生懸命料理して、出来上がった料理を楽しんで、その経験を次の晩御飯に活かすといった感じでしょうか。すわなち、その医療機関やその患者さんにおいて、必要なことや治療の目標のために、そのことをイメージして、必要となる医薬品情報を収集して、吟味して、施設の特徴や患者の背景等も考慮して、個別に適用・応用し、出来る限り最良な状態にした情報として提供し、そのアウトカムを評価して、次の対策や治療などに活かしていくことではないでしょうか。

もし、DI活動に求められるものが信頼性の高い情報の画一的な一方向性の提供だけと言うことであれば、医療機関毎に医薬品情報室がある必要性や病棟に薬剤師がいる必要性は低く、今後の情報通信技術(ICT)の進歩によってますます必要なくなるでしょう。情報の質や量は情報そのものが持つものですが、その情報の重要性は状況によって異なり、その情報の質や量の有用性も状況により異なります。この状況とは、患者個別の状態もあれば、医療機関の特徴などもあります。したがって、例えば公的に発出された安全性情報でも、その重要性はその医薬品の医療機関での使用状況などによっても異なります。効果的な情報周知の方法も医療機関の規模や特性などによって異なります。あるいは、その情報をどの程度加味する必要があるかは患者さん個々で異なります。

まさに、このことが現在の病棟薬剤業務実施加算でも求められている「必要な情報を必要な人へ」ではないかと思います。そのために、病院という施設のなかにおいて、患者個別に最適な薬物療法を提供すべく、個々の薬剤師としての病棟の患者さんや医療スタッフへのDI活動や、薬剤部(DI室)としての薬剤師や施設内の医療スタッフへのDI活動が重要になると考えています。すわなち、薬剤師個人として、患者個別に対応したミクロ的なDIリテラシーと、薬剤部や医療機関として対応するマクロ的なDIリテラシーの双方が重要であり、その体制作り(自己研鑽や教育やマネジメント)が必要となります。

さて、承認された医薬品は既に規制当局において審査(評価)がなされたものです。それを、なぜ医療機関(病院)でも評価する必要があるのでしょうか。それは、医薬品が医療機関で適切に使用されるためには、まずその医薬品をよく知る必要があるからです。そして、承認時には不足している情報は市販後の情報を監視し、その医薬品の情報をアップデートしていくことも重要です。私は医薬品を評価する際に、多面的な視点により一般化と個別化を行うことを心がけています。当院では、明確なあるいは特別な宣伝許可制というものはありません。医薬品情報はメーカーも持ってきますが、そのほか、メディナビ、国内外の公的サイトのチェック、SNSなども利用して、能動的かつ受動的に収集しています。新医薬品の情報収集の一つの手段として、メーカーからのヒアリングも行いますが、バイアスも生じます。バイアスが生じることは仕方のない事だと思っています。ですので、メーカーからのヒアリング以外にも審査報告書や海外での報告、文献報告なども含めて自分の目で確認し、自分の頭で考え直すように気をつけています。また、大事なことは評価することが目的ではないことです。評価は適切な使用のための手段であり、適切な使用のための対策に役立てなくてはいけません。評価の結果、対策を講じることも検討しなくてはいけません。したがって、薬事委員会では採用の可否だけでなく、採用した際の安全対策などについても検討されます。その安全対策などの案の作成もDI室の業務となります。

これからのICTの進歩のなかで、薬剤師としてどのように医薬品情報の活用に関われば良いのでしょうか、病棟薬剤業務で薬剤師としてどのようなDI活動を行うべきでしょうか、DI室は病棟の薬剤師とどのように連携すればよいのでしょうか、私自身試行錯誤で悩んでいます。本講演を通して、皆様と一緒に考えさせて頂きたいと思います。