副作用について考える

そもそも副作用とは? 有害事象との違いは?

薬剤師として副作用の早期発見や防止に寄与することは重要な職務であり、現在、副作用回避のための薬剤師によるフィジカルアセスメントやバイタルサインの測定などが普及しつつあると思います。ところで、皆様は「副作用とは?」と質問されたら何と答えますか?「望ましくない薬の作用」でしょうか。教科書的に広義の副作用は「主作用でない作用(すなわち主作用には関連のない薬理作用)」であり、これは必ずしも望ましくない作用ではありません。また、教科書的に狭義の副作用は「好ましくない薬の作用」で、このことは有害反応(adverse drug reaction; ADR)とも言われ、多くの場合、副作用という言葉はこのことを示していると思います。ちなみにWHOはADRを「有害かつ意図されない反応で、疾病の予防、診断、治療または身体的機能の修正のためにヒトに通常用いられる量で発現する作用」と定義しているようです。いずれにしても、“副作用”とは薬物との因果関係があることになります。一方で、本来、副作用とは区別して用いられるべき用語として“有害事象”という言葉があります。

以下の睡眠薬に関する3つの事例は副作用でしょうか?有害事象でしょうか?

 

  • 睡眠薬の服用後のふらつき」
  • 睡眠薬の服用後にトイレに行こうとしてベッドから落ちて骨折」
  • 睡眠薬の服用後に地震が発生し打撲」

 

①は薬物の作用による望ましくない反応(有害反応)なので副作用といえます。②は薬物投与後におきた望ましくない健康被害(有害事象)であり、おそらく薬物投与と因果関係がある有害事象ですが、骨折の原因はベッドから落ちた事であり、骨折自体は直接的な副作用ではないと思います。ただし、ベッドから落ちたことは睡眠薬によるふらつきなどの副作用の可能性が高いと思います。③は薬物投与後におきた望ましくない健康被害(有害事象)ですが、おそらく薬物投与と因果関係がない有害事象で副作用の可能性は低いと思います。このように、副作用と有害事象の言葉の使い方や定義の違いは重要です。

まず意識しなくてはいけないのが、以下のような点です。

・目の前でおこっている患者さんのその望ましくない事象(有害事象)は本当に薬による副作用なのだろうか?

・添付文書の副作用の項目に載っている症状だからといってそれだけで副作用と判断して良いのか?

・「添付文書に載っている副作用の頻度」は本当に副作用としての頻度なのか?

・その薬によらない有害事象(原疾患の影響や併用薬の影響など)を含めている可能性はないのか?(添付文書の副作用の頻度はその頻度を調べた背景が薬剤によって違いますので、安易に薬剤間での頻度を比較するのも危険です。)

例えば、最近発売されたSGLT2阻害薬は、薬剤によって添付文書の副作用全体の頻度も主な副作用の種類も異なります。治験でそれぞれの副作用をどの程度把握するように努めたかで頻度も異なってきます。これは薬剤自体の副作用の違いではなく、治験の副作用収集体制の違いによる影響が大きいです。

まずは、こういったことをしっかり考えることが薬剤師として大事だと思います。また、有害事象が副作用かどうかは、薬剤師だけの判断だけでは限界があります。他の影響因子の除外も必要であり、そのなかには原疾患の影響や他の疾患の影響などの医師の診断が必要となるような除外要因も当然考えなくてはいけません。では、その除外は診断なので薬剤師は関わるべきではないかというとそれも違うと思います。そこで、薬剤師も副作用の知識だけで判断するのではなく、医師とその症状の原因について協議することや、症状から考えられる要因について医師と一緒に考えることができるように臨床推論などの思考を学ぶことも大事ではないでしょうか。

添付文書に載っている副作用の症状だからといって、安易に副作用と決めつけないように注意してください。そして、副作用の可能性が否定できないことが大切なのではなく、副作用の可能性がどのくらい高いのか、起こり得る副作用はどのくらい重要なのか、どうしたら良いのかが大事なのです。

 

副作用の分類と相互作用

 副作用という用語や概念について述べましたが、それでは副作用らしいときに、その副作用はどういった機序に基づくものなのかという理解は重要と思います。それによって、その副作用への対応がある程度は考えることができるためです。あるいはその症状が副作用として起こり得る場合はどのような薬剤がどのような機序で起こり得るのかということを知っていれば被疑薬の推定にも役立ちます。

 

・薬理学的作用に基づく副作用

 薬物の効果は、その薬理学的作用によるものが一般的ですが、これは適応疾患に対して適正な用量を投与したときに発揮されるものです。不適当な疾患に対してや不適正な使用をしたときには、治療効果が現れないか、過剰な薬効が発現することがあります。また、多くの薬物は単一の薬理作用のみを有しているわけでなく、多様な薬理作用を示すために、治療効果とは異なる有害反応が見られることがあります。さらに、薬物の代謝物が種々の薬理作用を有しており、副作用の原因となる場合もあります。薬理学的作用に基づく副作用は、一般に用量依存的な反応であり、薬剤の投与中止あるいは減量で回避・軽減できる場合が多いです。表1には薬理学的作用に基づく副作用が発現する主な要因を示しました。肝・腎機能障害や薬物代謝酵素の遺伝的低下や欠損による薬物動態の変化、受容体や酵素などの活性および量的変化、投与上の不適正、薬物間相互作用などがあげられます。

 

・体質が影響する副作用

 体質が影響するものとしては、不耐症、特異体質、過敏症があります。これらの副作用は、一般に臨床で用いられる用量の範囲内では用量に依存しないで起こります。したがって、特定の個人に常用量以下の用量を用いても同様の副作用が起こりうるものであります。特異体質は、通常とは異なる薬物代謝によってできた代謝物が直接あるいはハプテンとなって細胞障害などを引き起こします。また、過敏症には免疫が関与した薬物アレルギーがあります。薬物アレルギーの分類は、免疫反応による組織障害の機序から分類したGell&Coombsの分類(文献1)がよく用いられます(表2)。ただし、薬物アレルギーの多彩な症状をこれらの4つに分類することは、アナフィラキシーなどの典型例を除くと難しいのが実際です。

 

・薬物相互作用

 薬物相互作用が要因となり重大な副作用が生じることも少なくありません。近年、医療の高度化と多様化、高齢化社会の進展などに伴い、複数科受診による重複投与および多剤併用投与による薬物間相互作用のリスクが増加しています。相互作用の発現機序には、薬物動態学(pharmacokinetics)的相互作用と薬力学(pharmacodynamics)的相互作用があります。薬物動態学的相互作用は、薬物の吸収、分布、代謝、排泄が他の薬物により影響を受け、血中濃度が変動することによって過剰な効果の発現(中毒)や効果の減弱が起こる場合を言います。代表的なものには、肝臓での薬物代謝酵素活性の阻害などがあります。薬力学的相互作用は、薬物の体内動態(血中濃度)には変化がないですが、受容体などの作用部位での相互作用によって、効果の増強や減弱が起こる場合を言います。ニューキノロン系抗菌薬と非ステロイド系消炎鎮痛薬の併用によるけいれん誘発などがあげられます。医薬品添付文書では、相互作用の注意喚起は「併用禁忌(併用しないこと)」と「併用注意(併用に注意すること)」に分けて記載されています。併用注意に関しては、実際には必要上併用することも少なくなくありません。一方で、添付文書は網羅性という観点で時に過剰ですが、時に過少でもあります。注意喚起されていなくてもリスクの高い相互作用は起こり得ます。相互作用のメカニズムや危険性(程度)、適切な代替薬の有無なども把握したうえで、患者個別に対応を判断する必要があります。

 

副作用のモニタリングと鑑別

 副作用のモニタリングは、安全性の確保のために必須です。特に新規薬剤においては副作用のエビデンスが乏しく、市販後に報告された重篤な副作用や未知な副作用に対するモニタリングが重要です。副作用モニタリングに関しては、その薬剤の副作用発現パターン(副作用の発現しやすい投与期間や投与量との関係など)、危険因子(副作用の発現しやすい疾患、年齢、併用薬など)や初期症状などの情報を把握しておくことが必要です。

 しかし、臨床の場において薬剤が投与されている患者に、あるイベントが起こったとき、それと薬剤の間に因果関係があるか否かの鑑別は必ずしも容易ではありません。臨床経緯から薬剤との因果関係を評価する種々のアルゴリズムが報告されており(文献4)、これらのアルゴリズムはスクリーニングとして役立ちますが、原疾患、合併症、併用薬、投与時期、投与量、臨床検査値などの個々の患者情報に基づいて、因果関係がどの程度あるのかを検討することが必要となります。副作用かどうかの判断のポイントは、①薬剤の投与期間と有害事象の時間的関連性の評価を行う、②既知の副作用かどうか評価を行う、③原疾患や医薬品以外の治療など、その他の原因による反応の可能性を評価する、④状況によっては薬剤の再投与やアレルゲン同定試験などで被疑薬を同定することを検討する(ただし多くの場合は困難)、ことです。また、副作用と薬剤の因果関係が強くても、投与薬の減量、中止の基準をどこにおくかという問題についても、患者の状態、副作用の重篤性、薬剤の蓄積性、副作用の経過などを総合的に考慮して決定されるべきでしょう。

 

おわりに

 以上、副作用の考え方について、私見をまとめてみました。繰り返しますが、副作用の早期発見や重篤化回避は決して簡単ではありません。簡単ではないからこそ、くすりのプロである薬剤師が関わることが重要で、他職種と協力する必要があります。一方で、薬剤師独自の視点や薬剤だけからの視点には落とし穴もあります。だからこそ、専門性を発揮しつつ、専門外の視点も考慮して、他職種と一緒に考えること、そういった姿勢がまず基本ではないかと思っています。

薬剤師というくすりのプロとして、プロだからこそ、一生懸命勉強をして、経験して、協議する姿勢を忘れないようにしてください。そうすれば、きっと副作用の回避や重篤化防止に関わっていけるようになると思います。

                                                                                             

 

  • 村中正治, ほか:薬物アレルギー. 臨床アレルギー学 改訂第3版, 宮本昭正 監 p410-423, 南江堂, 2007
  • Minami H, et al: Irinotecan pharmacokinetics/pharmacodynamics and UGT1A1 genetic polymorphisms in Japanese roles of UGT1A1*6 and *28. Pharmacogenet Genomics 17(7): 497-504, 2007
  • Aihara M, et al: Pharmacogenetics of cutaneous adverse drug reactions. J dermatol 38(3): 246-254, 2011
  • Naranjo CA, et al: A method for estimating the probability of adverse drug reactions. Clin Pharmacol Ther 30(2): 239-245, 1981

 

 

 

表1. 薬理学的作用に基づく副作用が発現する主な要因

・薬物動態の変化

 加齢,肝障害,腎障害,遺伝子多型など

・薬力学の変化

 受容体や酵素の活性および量的変化

・投与上の問題点

 適応疾患,用法用量の不適正

・相互作用

 薬物-薬物間,薬物-飲食物間,薬物-嗜好品間

 

 

 

 

表2. 薬物アレルギーの分類

 

反応

抗体

主な関与細胞

補体関与

主な標的組織

疾患例

Ⅰ型

アナフィラキシー反応

IgE

肥満細胞

なし

皮膚,肺,腸管

アナフィラキシーアレルギー性鼻炎,蕁麻疹,喘息

Ⅱ型

細胞傷害反応

(細胞融解反応)

IgG,IgM

細胞傷害性T細胞

あり

皮膚,赤血球,白血球,血小板

溶血性貧血,血小板減少性紫斑病

Ⅲ型

免疫複合体反応

IgG,IgM

多核白血球,マクロファージ

あり

皮膚,血管,関節,腎,肺

皮膚小血管性血管炎,血清病,糸球体腎炎,ループス腎炎

Ⅳ型

細胞性免疫反応

(遅延型過敏症)

感作T細胞

なし

皮膚,肺,甲状腺,中枢神経など

アレルギー性接触性皮膚炎,硬結性紅斑,移植片対宿主病